こんにちはGohです.アート&暗号通貨・ブロックチェーンの領域でここ数年活動しています.
この記事はそれ関係のネタで,雑談みたいなものです.まともな媒体には出せないような内容ですから,楽に全裸で読んでください

*本記事は https://note.mu/gohuozumi/n/n9e2f532a82ba から移行したものです

さいしょに

少し前から,アート&ブロッチェーンという接合領域が世間で広く知られるようになりました.もうすぐ発売される美術手帖でも特集が組まれるくらいです.
僕も執筆や情報提供などさせていただいてて(なので届くの楽しみにしてる),かつ基本的にブロックチェーン利活用の推進派ではあるのですが,この動向で懸念していることが多々あります.
(追記:もう発売されたそうです.面白いのでぜひ

たとえば虚偽の誇大広告の蔓延や,盲信者たちの部族化などです.ここでは営利企業が,出来ないことを出来ると言って資金調達していたり,後先考えずに自社ネットワークへのステイクホルダーの引き込み戦を競合たちと繰り広げており,ブロックチェーンを使えば「安心安全」「非中央集権」「民主化」などと意味不明で不適切な概念の転用,というかフリーライドによって自らの地位向上につとめています.一部のメディアは,それがさも先進的で素晴らしく,アート産業が抱える深刻な問題を解決する救世主が出現したかのように取り上げ,事情をよく知らない人たちがそれを信じ,加担してしまう.そういった間違いに対して指摘できる人はほぼおらず,一言でいえば悲惨な状況です.
僕には,かつて仮想通貨が実態を伴わない勢いによるバブルで人々の信用の失墜を招いたことを,繰り返しているように見えます.

この領域に必要かつ欠落しているものはジャーナリズムです.しかしアートとブロックチェーンの双方に詳しく,かつ批評精神をもつ人なんてほとんどいない上に,他のあらゆる領域においてもジャーナリズム自体が軽視ないし否定されるような社会情勢なので,いろいろ厳しいだろうなと思います.
僕はジャーナリストじゃないので誰かやってくれないなかといつも思ってます.

(ただあまりに酷いので,「喧伝されていて,みんなが信じていることは,実際はできない,あるいはすべきなのかどうか」といった最低限のことは,自分でどこかに書いて,アート界隈の人たちに知ってもらったほうがいいとは思っています.知らないと騙されるし,興味持った人が考え始めるための足がかりは必要ですよね.
ここに書こうかなとも一瞬思ったんだけど個人ブロクだとあまり読まれないし,出典ださずにパクるやつ大杉だし.Twitterとかもだけど,もうウェブの個人発信ではまともなこと書けなくなってしまったので雑談にします.好き勝手書けるの最高)

アート&ブロックチェーンといっても一括りにできるものではないはずですが,特定の傾向のものが支配的になりつつあります.今回はそれについてです.


はじまったばかりの領域? しかし政治的に優劣は明確になりつつある

実際のところ

最近,二大オークションハウスの一つのクリスティーズがこんなプレスを出してました https://www.christies.com/about-us/press-archive/details?PressReleaseID=9160&lid=1

ブロックチェーンでの作品管理サービスのArtoryと業務提携して,作品の販売や来歴データを管理するパイロットプログラムを始めるというものです.
またクリスティーズは以前,アートマーケットでブロックチェーンをどう使えるかのサミットを開いていて,いろいろなブロックチェーンでの作品管理サービスの企業を呼んだりしていました.たとえばCodex社とかですね.余談ですが,CryptoKitties の猫絵を4000万円で売るとか,話題作りのためにしょうもないことしてたところです(チャリティーだから別にいいんですが,まともな信頼はもう得られないんじゃないかなと思う).
暗号通貨の台頭に対して銀行などがそうであったように,アートにおいても新技術の影響に危機感をもっているのは巨大な既得権益側でしょう.といってもアートでは危機にはならなさそうですが,時代の流れに応じて新技術を取り入れる姿勢であり,検証の必要性を認めているようです.そしてスタートアップ企業は,巨大オークションハウスをDisruptするのは無理だと当事者も思っているので,ヒヨって融和策をとります.それらの思惑が噛み合うのが,こういった業務提携といえます.
特にスタートアップ側は,取り込めるネットワークの大きさがそのまま自社の強さになるため,こぞって強者と関係を結ぼうとします.対象はオークションハウス,美術館,大手ギャラリーなどで,この事例以外にもいろいろとあります.自社の規格が業界で標準的に扱われるものになれば,それだけ競合優位性を得ますし,逆に(よくない表現だが)ショボい参加者しか取り込めないネットワークになるなら,まともにビジネスできずに潰れるでしょう.

ということなので,政治的に何か動いてんな,提携するのそこなんだ,技術公開してたっけとArtoryのファウンダー紹介みると,”he was Sotheby’s Vice Chairman and Worldwide Head of Private Sales. “とかいろいろ書かれてます.あっ(察し)という感じで.
実際に裏で何が起きてるのかは知りませんが,一つ明らかだと思うのは,暗号通貨文化由来のような価値観(スタートアップ的な価値観も)が影響力をあまり持たない領域であるということです.物事を決めるのは,コード主導ではなく,プロダクトの出来の優劣でもありません.もっと生々しい政治力や商習慣の知見などなのでしょう.

そう思う理由は次の二つです.
一つは,アートマーケットの大部分は,既存の中央集権的な信頼に強く依存しているからで,その核心的なものは現存のブロックチェーンでは代替できないし,するはずがないからです.オークションでもギャラリーでも,生身の身体的な信頼や,既存の金融的信用が不可欠です.
前者はイメージしづらいでしょうが,極端な例では,かつてはコレクターに家宝を提供してもらうために世代をまたいでお付き合いをしていて,担当者や組織に信頼を蓄積させることで競合優勢性を得ていたりしたのが,最近はコレクターも経済合理的に販売委託先をコンペで決めるようになっているそうです.そういった信頼形態の由来と推移から導かれるものは,信頼関係の帰結として影響力は貨幣自身に独占化される傾向にあり,それを阻止して力が手元を離れないように関係構造を縛るインセンティヴが販売側にはあるということです.
もし全てが,本当にただ自由に売買できる世界になれば,彼らは巨大な組織を維持できなくなります.しかしブロックチェーンの本来の性質は,その関係を自由にして貨幣の独立性を高めるものですから,利益は相反します.そのため,ブロックチェーンを使う,もっといえばパブリック・ブロックチェーンを使うと謳っているサービスでさえも,実際の運用としてはプライベート・チェーンなどと同類のものになるでしょう.バズワードとして使ってるだけで,意味はないと思います.
後者は,美術品の多くは“物体”であり,高額な商品であり資産だからといえば分かると思います.

もう一つは,おそらく皆さんの印象とは異なり,ブロックチェーン上のアプリケーションレイヤーで,特に作品管理とかのシステムには,技術的優位性があまりないからです.
システムを作るのは難しくないので,暗号学の専門家やパブリックプロトコルを開発できるような希少な技術者を囲ったところで勝負に勝てるわけではありません.すでに基本モデルが周知されているため特別な創造性が必要な領域でもなく,普通に優秀な人を雇うとか,大抵の技術的なことはお金で解決できるのだと思います.(正確に言えば,やはりブロックチェーンであること自体が,本質的には求められてないのだと思います.

なので,アート&ブロックチェーンに興味をもった人が検索して出てくる記事によく載っているものと,商業的に成功したり生き残るものとは,違うのかもしれません.
話題になって拡散されやすいのは,「〇〇企業がVCから数億円を調達!」みたいなテック系の無教養な記事や,それを元にアートマーケットでのブロックチェーン応用を論じた記事などです.しかし彼らはそもそもアートをろくに知らなかったり,テクノロジー音痴で営利企業の誇大広告を真に受けてる人たちだったりするうえに,実態を検証して記事を書いているわけではありません.
もちろんしっかりと書かかれているものもありますが,そういうものよりも,拡散する側が内容の正確さなんて判断できずに民主化だの分散だのとそれっぽい嘘を書いてるものを祭り上げてしまいます.で,後者のほうが人目に触れやすいところに来ます.
そして,ICO で十数億円とか集めたほとんどのプロジェクトが失敗しているのを見てわかると思いますが,いくら資金を集めても,成功できないものは,できません.
たとえよく見かけるものであっても,アートマーケットにおいて実際の政治力を持たないものは,ブロックチェーンを使ってようが何だろうが,それを持っているものと同じ土俵にすら立てていない可能性があります.

そういえば,もう片方の大手オークションハウスのサザビーズで,以前AIスタートアップが買収されてました.やはり今は,老舗でも新技術を取り込んでいくんだと思います.ブロックチェーンでの作品管理システムも,今後もし本当に必要になるなら,内製するかどこかが買われたりするんでしょう.
日本だと,フィスコ取引所とARTiT合同のregistArtがシンワアートオークションと提携するとか何かで見ましたが,実態があるのかよく知りません(開発体制どうなんかなというのが正直な印象だし,これって株価s…).あとSBIもブロックチェーン関係は攻めるっぽいですし,他のところでも,今後オークション界隈でブロックチェーン使わなければ不利になることが,もしあるなら,取り入れられるのかもしれません.(もちろんギャラリーもです.ただセカンダリで使われないものを使ってもしょうがないですよね.商業的な観点では,何のための来歴管理なんですかという話になるので)
そのときに自前でチェーンを用意する意味があるのかというか,客を囲い込みきれないのなら「ウチで買ったものはヨソでも売れる(資産たらしめるための流動性を越境的に確保します)」という保証に利点はあるので,どこかの,より大手のチェーンのサービスを使うようになるのかもしれません.(インターオペラビリティにはあまり期待していません.プレイヤーの性質的に.

上述したように,今はまだブロックチェーンが既得権益の核心を代替することはなさそうですが,長期的に見れば話は別です.自分たちがこれまで排他的に蓄積してきた信頼をネットワークに流出させる,ということの本当の影響を,多くのアート関係者たちはまだ理解していないと思います.これを理解した時にどんな反応するのかなと,ちょっと興味あります.

あと,二年くらい前に,ブロックチェーンでのダイヤモンド流通管理のEverledgerと,美術品データベースのVastariが提携して美術品の来歴証明のサービスをつくってたはずです.今はもう使ってるぽい?
Everledger みたいにサプライチェーンで技術や経験を蓄積しているところは強いでしょう.つまり,ある特定のプロセスを信用して任せられるほど,事業として確立させているかという話です.中国だったらブランド品とかの真贋選定のVeChainとかでしょうか,知らないんですけど.美術品も似たようなものだし転用はできますよね.
逆に,サプライチェーンも評価付けもマーケットも,あれもやるこれもやる,と総合力をアピールしてるようなサービスは,全てにおいて中途半端なだけで何もできない気がします.正確に言えば,そいうものの実現はとても時間のかかるもので,今やっても生き残れないだろうと思います.
たとえば,あなたが高額あるいは安くはない美術品を持っているとします.それを何らかのかたちでサービスに預けるわけです.何を重視しますか?

興味深かったのは,同じくブロックチェーンで作品管理する台湾のRCCCを,たまたまTwitterで見かけて知ったことです(日本人の誰かが台湾のカンファレンスの感想みたいなのでアップしてたのかな?).たしか当時は公式サイト以外は英語で情報がほとんどなくて,なるほどなと思いました.ちょっと調べたら別の国でも同じようなものがあるんですよ,英語は公式くらいしかないけどサービス動いてそうなやつとか,その国では地盤固められそうなやつ.英語でアート&ブロックチェーンとかで記事になってるものは,上述のように別にちゃんと実態調べて書かれてるわけではありませんし,網羅性なんてないです.自分が知らないだけで,世界中で,それぞれの国で似たようなのがあるんでしょう.
他にも Verisart,Maecenas,Portion,Masterworks,Knownorigin.io などいろいろありまくります.昨日だってICOやりますっていってるアートのやつ見かけましたし.まだ増えんのかと.

また現代アートマーケットに向けた作品の来歴管理とかでなくて,デジタルアートSNSだとCreativechainとかも結構前からあった気がします.(あれ名前変わったの?)
ちなみにここに列挙してるのもが,まともなのかスキャムなのか僕は知らないので,使う人はご自身の責任でどうぞ.

新しいという声の裏に

今になってようやく知られるようになってきた,美術品の所有権や来歴管理などのブロックチェーンの応用は,2015年あたりに
ascribe
がやり始めたもので,彼らはビジネスにならないからやめています(ピボットして今は別サービスを開発してます.で,参入時期が早すぎたからやめたと発表されてたのですが,2018年現在その問題は全然解消されてないですし,そもそも参入時期の問題ですらないかもしれません).

僕も当時,自作品の管理ができないかと思って試しに使ってみたんですが,秘密鍵を自分で持てなくて使うのをやめたと記憶してます.それはつまり「自分の作品の電子化した権利を自分で所持できない」ということです.サービス事業者が鍵をもっているので裏で操作できますし,一元的に管理されているものは攻撃の標的にもなりやすいです.仮想通貨取引所のハッキング事件とかで聞いたことあると思います.(黎明期ならまだしも,未だに多くのサービスで,秘密鍵をユーザーが所持できません.主にユーザビリティなどを理由にしているようですが,だったら非中央集権とか嘘を言うなよって思います)
ちなみに秘密鍵というのは,ここではブロックチェーン上のアセットの運用決定権みたいなものだと思ってください.Bitcoinだと,その鍵を持っている人が自由に送金できます.実例があって,僕が香港で展示したときに聞いたんですが,一緒に参加してた香港人作家の親族が,エージェンシー経由で多額のBitcoinを買ったのだが,全部持ち逃げされたそうです.自分でお金を出してBitcoinを買って入金の確認はしたけど,鍵を持っていたのはエージェンシーだったと.
そういうものなので,作品を本番登録するわけにはいかず,結局自分でシステムを開発することにしました.そして昨年には実際に一通り開発したのですが,やり終えて分かったことは,やはり今ではないのだろうなということです.
(あ,秘密鍵のはおまけ話で,別にそれによって黎明期にビジネスにならなかったという話ではないです,念のため)

アート&ブロックチェーンのファースト・ウェーブはそれくらいの時期(2015年あたりまで)で,ブロックチェーンのハイプサイクルのピーク期以降の今は,セカンド・ウェーブの最中とでもいっておきましょう.
今年出てきたような人たちが先駆者ということは全くなくて,ほとんどは後追いの模倣者です.根幹のアイデアもビジネスモデルも,大して進歩していない二番煎じでしかない.にもかかわらず,一部のメディアや声の大きな人たちが,先駆者には光を当てずにパクリしか出来ないハッタリ野郎ばかりを持ち上げてしまうため,領域として腐っていくんだと思います.

で,このセカンド・ウェーブも,上手くいかないんじゃないかなと思います.今はブロックチェーン自体の認知度が高まって資金調達もしやすくなった(というか,ちょろい投資だとみなされて無意味に金が集まってた)だけで,前回のクリティカルな問題が解消されたわけではありません.また基礎となるブロックチェーン自体が発展途上で,アートのアプリケーションレイヤーで実用できるようになるには,あと数年はかかります.たとえばNTFのような標準的なものや分割所有権などいくつか新しいものが出てきましたが,実用できる状況はかなり限られ,Ethereum のスケーリング問題解決を待たなければなりません.
セカンド・ウェーブは,技術的な克服などほとんどないまま,金と政治力だけで,これまで通りの中央集権的なビジネスモデルで,ネットワークをおさえることでステイクホルダーを自社サービスにロックインさせて競合優位性を得ることを目的化しているように見えます.
彼らにとって,自律分散性とかブロックチェーンでしか実現し得ないことなんて別にどうでもよくて,ほぼ関係がない.そんなものを実現することよりも,「ブロックチェーンという言葉を掲げることによる効用」を最大化させたがります.ブロックチェーンの概念だけを都合よく宣伝文句に使い,既得権益や競合企業に対して自らが正義であると訴える.そして注目を集めて参加者の警戒を解くために,誇大広告を流して真実は隠します.
ブロックチェーンを使っていれば当面は解決できないはずの根本的な問題や,ネットワークに参加すれば拘束されること,自分が獲れる本当の市場規模など,不都合なことは伏せて参加者を取り込み,プロダクトの構築よりもネットワークの拡充を急ぎます.なぜなら,他の競合企業も同じことをしていて,それはいわば陣取り合戦であり,早く大きく有用な陣地を確保できたものが勝つからです.オセロでいうところの四隅をとるようなことが上述のような業務提携として見られ,決め手を打たれた後は,盤上で形勢を覆すことはできなくなります.
これは,ファースト・ウェーブの試行錯誤の時期には,それほど見られなかった動きです.「ブロックチェーン」がバスワード化した弊害の一つなのでしょう.

もちろん,そうでないもの(ブロックチェーンならではの発展可能性を探るもの)も数多あるはずなんですが,あまり話題にならないようになっているのがセカンド・ウェーブの性質なのかもしれません.今目立つのは,ブロックチェーンでなくて企業の信用に依存させた従来システムで実現できるものなので,逆の見方をすれば,普通にビジネスできるともいえ,この波は長くだらだらと続き気がしています.

重要なのは,そういった背景を理解して,参加者たちが意思決定できているかどうかです.最近になって,「アートはブロックチェーンの応用として適している!」とか,「ブロックチェーンがアートを変える!」みたいな,論拠がない無茶苦茶なものを見聞きするようになりました.自分にとって新しい領域を知って,気持ちが高ぶるのは悪いことではないので,今度は一旦冷静になって,自分が何に加担しているか,支持しているものは本当は何であるかを,よく考えてみてほしいと思います.別に急いで参加しなければ取り残される,というものではありませんから.

僕はこの動向が良いものだと思いませんが,それぞれが好き勝手にやってればいい,別に必要以上に干渉する気はないという考えです.ただし,嘘の正義を語っていたり,自分が未来を賭けて取り組んでいるものを支配しに来る動きがあるのなら,遠慮なくぶっ叩いていいとも思っています.

ちなみに,アートマーケットを効率化するサービスはあっていいと思います.個人的に良さそうなのがあれば使ってみたいですし.
アーティスト個人としては,普通に使いやすくて,自分の創作が届くべき人に届けられるものなら,ブロックチェーンとかどうでもいいです.というか分散アプリでないなら,中央集権的な責任を全うしようとしない事業者のサービスなんて使わないです.そして「アーティスト支援」や「全ての参加者にメリットがある」というような耳障りのいいものには注意して,“本当のところ経済的に報われるのは誰か”を,よく検証したほうがいいと思います.(本心でアートの経済を回そうとしてるのもあるぽいので,そういうのは普通に応援しています.


実際には何を使えばいい?

僕はアート&ブロックチェーンの特定の営利サービスには加担したくないので,明言は避けます.やんわり書くので察してください.

1商業領域で,ギャラリーやアーティストやコレクターが主体なら,普通に規模の大きいところを試しに使ってみればいい気がします.だいたいの期待できそうなものは,まだ一般公開されてないかもしれません.
もし自分がアーティストとして作品を登録するなら,つまりその後の流通の発展を求めるわけですから,市場の大きい英語圏のものを使うというのが,第一の選択になるでしょう.残念ながらというか,日本語圏に閉じてるものだと市場規模的にも発展性的にも詰んでるというか,今はインターネットで世界中のサービスを使えるのに,わざわざ選ぶことはないかな,というのが本音です.グローバリズムに安易に賛同しませんが,その対抗策が日本の営利企業だということは,ないし.(正確に言えば僕は下記理由により英語圏のでも今は使わないです)

この選択の理由を,上述した誇大広告の話と絡めて簡単に書いておきます.
まず,どういったサービスであっても,現在はある程度,囲い込まれることを理解しなければなりません.そもそも基礎となる作品管理システムなんて,ころころ変えるものではないですし,登録すれば依存させられることは分かると思います.
企業は「囲い込みはしません,あとで移行できますよ」と言いますが,移行コストは高く継続利用せざるを得なくなりますし,移行できるのかも不明です.(追記:配慮してこうやってソフトに書いたら都合よく解釈されたので強めに言うと,「移行できないと思ってください」.十中八九できません.実際に移行できる状態になってからのみ,この考えを改めればいいです.口だけの広報は全て無視です)

その根拠ですが,ブロックチェーンといってもいろいろ種類があって,同じブロックチェーンであっても現状はサービスのそれぞれで作品管理の規格が違います.なので特定のブロックチェーンのサービスで作品の所有権などを確立させたら,他のところにはそのままは移行できません(Ethereum 上でNFTを使っていてもです,それで完結してないので).一旦破棄して登録しなおす必要があります.でないと,一つの物体の,同一の所有権が,同時に複数存在することになってしまう.
そして企業側がその移行手段を確立させないと,ほとんどの人には自力でやるのは無理でしょう.今これを読んでいる何パーセントの人が,たとえば異なるブロックチェーン間で,複雑な情報で構成されるアセットを矛盾なく自力で移転できますか?
大きなネットワークを持つものほど,その手段を用意する経済的な動機はありませんし,現状は小さなところでも破棄の仕組みすら用意してなかったりします.つまり移行自体が現実的ではないかもしれません.
この問題は,将来規格が標準化されれば解消されるかもしれませんが,当面はまず実現しないし,すべきではありません.なぜなら,アートにおいてどのようなプロトコルが望ましいかは今の技術段階では決定も推察もできないからです.PoC すら十分に行われておらず,それぞれが試行錯誤しなければならない段階です.この先に幾度となく根本的な規格の見直しを迫られるでしょう.

また,ICO でお馴染み詐欺師の人たちが金集めするときによく使う宣伝文句に,「〇〇兆円規模の市場がありブロックチェーンでそれを取りに行く」というのがあります.当たり前ですが,世界全体での市場規模の数字を出したところで,その企業がそこにアクセスできるわけではありません.アートマーケットにどれだけの規模があろうが,その企業が獲れるのは本当はどれくらいかを,商業的に参加するのであれば検証しましょう.
たとえば中国でビジネスするなら政府に取り入らないといけない,それも含めて中国国内の競合と渡り合う算段はあるのか.アートのセカンダリであれば,ほとんどを特定の組織が占め,既に上述した提携関係などを築きつつあり,プライマリであっても商売の核心は現存するブロックチェーンでは代替できません.ブロックチェーンならではの成果が期待できるのは,技術開発段階的にもっと後になってからです(僕はブロックチェーンには巨大な既得権益をDisruptできる力があると思ってますが,それは将来の話です).
では,一体どういう理屈で,派手に掲げられる市場規模を新興企業が獲得できるのでしょうか.国内ですら,ほとんど獲れないかもしれません

そう考えると,商業的成功を期待して参加できるものは限られてくる気がします.今はどこも一般公開してないのでよく分からなくても,そのうちはっきり見えてくるでしょう.
せっかくなのでついでに言っとくと,その大きな市場の数字,つまりこれまでのアート産業をつくってきたのは既存のプレイヤーたちですよね.それをブロックチェーン企業が乗っ取ることに一体何の正義があるんでしょうか.民主化とかそれっぽいことで,みんな騙されてませんか?
昨今は,やたらとDisruptって美化されてますけど,そもそもテック企業やVCが自分たちを正当化するために印象操作としてつくったようなストーリーですから,アートの人たちが無批判に乗っかてるのは滑稽でしかないと思います.道徳的批判よりもオリジナリティの欠如という意味で.

2公共領域で,美術館などが主体なら,間違ってもまだ実作品で使ってはなりません.あくまで実験に留めるべきで,それも長期間の検証を前提としたものでないと時間の無駄になるでしょう.(これについては美手帖に書いたので読んでみてください)
このあたりにご興味のある美術館や政府機関等の公共事業関係の方は,情報をご提供しますので(自己防衛や利活用のために,技術的に何ができて何ができないかの基本知識をお伝えしますので)僕宛にご連絡ください.
フォームからどうぞ

最後に,僕が現状の主たるアート&ブロックチェーン動向に批判的なのは,ブロックチェーンの影響力を過小評価しているような凡庸なアイデアばかりだからです.前例から何も学ばず,金と政治力と誇大広告で支配体制だけを築こうとし,過剰投機と注目集めで(しょぼい)バブルをつくるのではないか,そして人々の信頼を失うのではないか,と危惧しています.
なので,僕はセカンド・ウェーブには乗らないことにしました.この動きを支持しないです.
ブロックチェーンや暗号通貨の思想に感化され,そのアートとの接続に期待を持たれた人は,営利企業の言ってる意識高いだけのハイプは放っておいて,ぜひもっと長い目でこの領域を見てほしいと思います.


さいごに

記事はここまでで全部です.アートに関わる人たちに広く共有しておいた方が良い事柄なので,無料で公開しています.もしまたこういうのを読みたいと思っていただけるなら,寄付として,投げ銭や僕のショップで作品を買ってもらえると,とても励みになります

*追記:ここに書いてることとか僕のやってることを丸パクリしてる詐欺師がいるようなので注意してください.繰り返しますが僕はこの動向を支持していないです.それはブロックチェーンの技術的な理解に基づいて,です.技術といっても簡単な基礎なのですが,それでも多くのアートの人達にはキツイだろうと思って慣習や政治情勢に寄せて書きました.ただ支持しない理由の核心はそれではなく(含まれはしますが),当面は技術的に不適切だから,です.この記事も含めて,他人の話や広告記事を信じないことを強くお勧めします.自分でコード読み書きして何か作ってみると手っ取り早く理解できるはずです.Don’t trust, verify.

*この下に「有料コンテンツです」と表示されますが,その購入ボタンは寄付用です.記事に続きはありません.


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記事単品:アート&ブロックチェーンの実際――雑談

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